DS-04  退院


【 食 事 】 − 2005.02 下旬 −

食事は、私の場合、胃・腸を斬ったわけではないので、三日目から食べる事ができます。
術後二日間は、栄養剤を点滴されていました。
三日目から食事という事ですが、普通の食事ではありません。
「流動食」というもので、初日は、全粥とリンゴジュースみたいな飲み物だけでした。
次の日から、全粥が、除々に三分粥、五分粥、七分粥になり、通常のメニューになるのです。
全粥というのを食べたのは、初めてだと思います。
ハッキリ言って、水です。 それも白く濁った・・・(汗) 不味いです。。。
胃が完全に回復していないという事もありますが、さすがに、食えませんでした。
スプーンで3口程、すすってギブアップしました。(汗)
三分粥、五分粥も同じです。少し粘土がある程度のものです・・・。
これは、もういい加減にして欲しかったです。(汗)
まさに、小学生の時に図工で良く使った「のり」そのものです!
サイドメニューのリンゴジュースばかりだと飽きると思ったのか?代わりにグレープジュースが
出たりします・・・。 ・・・そんな事では気分は変わりません。。。

隣のベットにいる70歳のおじいちゃんは、私が手術した1日前に同じく肝臓を斬りました。
なので、私が七分粥をすすっている時に、1日早く通常のメニューが出されました。
おじいちゃんは、「やった!」と喜んでいました。非常に羨ましい・・・。
こっちは「のり」と牛乳です。<最悪の組み合わせ・・・(T T)

食後に薬が出ていました。その薬は、ナント、下剤です!(汗)
腹を大きく斬ったので、汚い話ですが、ウンコの時にリキむと弾みで傷が開いてしまう事が
あるそうです。 あるというか、その可能性もあるという事だと思います。
便をゆるくするために、あえて下剤で下痢をさせ、腹筋をあまり使わなくても排便出来る様に
するのでした。 これも結構、キツイです。 「のり」を食った後に下剤ですから・・・(汗)

そしてついに待ちに待った常食(普通食)の日がやってきました!
朝起きてから、朝食が待ち遠しかったでした。。。
そして朝食が配られた!
ルンルン気分で、フタを開けて見ると、・・・「のり」だ・・・。(汗)
看護師を呼び、「何で、粥なんだ???」と聞くと、通常食は昼飯からだと言う。。。
仕方が無いので、この「のり」と何だか分からない液体ジュースを適当に飲み、
朝食をとっとと切り上げ、廊下に貼り出されている献立表を見に行ったのでした。
本日の昼のメニューです!
ナント、そば! そばは好きなので非常に嬉しい!それも「かき揚げそば」だ!!

ついに昼飯の時間が来ました!
フタを開けると、間違いなく「かき揚げそば」です!!!
隣のおじいちゃんもそばであるが、完全な糖尿病なので、かき揚げではなく、
山菜そばにアレンジされていました。(笑)
久しぶりのメシらしいメシでした。 そして一気に完食です!!!

・・・うぅぅ、、、
・・・非常に、苦しい・・・。私が馬鹿だった・・・。そりゃ、一気に全部食うからだ・・・。
本当に苦しい・・・。ダメだ、少し動こう!歩いて腹を慣らそう。。。
廊下に出て歩きました・・・が、やはり、非常に苦しい・・・。(汗)
手で腹を押さえ、ゆっくりとロビーに向かいました。
一刻も早く、ロビーのソファーに座りたかったのです。
看護師D:「どうしました?傷が痛むのですか!??」
私を見た看護師が慌ててやってきました。
私:「いや、、、大丈夫です・・・」(汗)
看護師D:「でも、凄く痛そうですよ!」
私:「いやいや、実はね・・・、食いすぎてね、、、
そばが好きなもんで、全部食ったら、痛くなっちゃってね・・・」(汗)

看護師D:「・・・」

何とも情けない話でした。。。





【 面 会 】 − 2005.03 上旬 −

数週間して、腹から出ている管(正式にはドレーンと言う)が、外れました。
斬った肝臓の切り口から、胆汁が出てくるため、それを体に出す必要があります。
わき腹に穴を開けて直径1.5〜2cm程度の管で、胆汁を外に排出するのです。。。
勿論、管は手術中にセットされているのですが、この管はどこまで体に入っているかというと、
肝臓の切り口付近まで無造作に入っているとの事でした。
そんなので、大丈夫なんだろうか?と思えるほど、大胆な処置方法なのです。。。
このドレーンは、一気に抜き取るのではなく、大体、4日ぐらい前からでしょうか?
日を追って、少しずつ抜き取るのです。

担当医に聞いたところ、この抜くタイミングというのは、面白い事に、
手術を手がけた執刀医の判断により、抜くというのです。
他の医師は、もういいのでは?と思っても、執刀医がOKを出さないと
ドレーンは抜けない・・・という事なのです。
なので、執刀医は、外に排出されプラスチックの容器に溜まった胆汁を見に来て
「もう大丈夫でしょう!」てな感じで、ドレーンを抜く許可を出すのだと言う。。。
医療現場の昔からの風習なのだろうか?非常に面白い話だと思いました。

そして、私の腹に突き刺さっていたドレーンがやっと抜けたのでした!
コレがあるのと無いのでは、大違いです!
抜く際は、少し引っ張られる感じがするだけで、大した痛みは感じられません。
笑えたのは、大学病院だから仕方がない話なのですが、
完全に抜く日(回診時)に、担当医が研修医に抜く時のコツを私の体を使って
レクチャーしたのでした。
要するに、もう数ミリで抜ける状態から、わざわざ水(食塩水?)を入れて
溢れ出させる・・・、皮膚にはまだドレーンが刺さっているが、腹膜から出ているので
水を入れても溢れる→だから抜ける状態なのだ。・・・という感じで、研修をしたのでした。
軽い実験君でした・・・。(笑)

ドレーンが抜けてかなり開放的になりました!
今までロープに縛られていた犬コロ状態から、一気に健康的な人になった気分です♪

次の日、友人・会社の上司・先輩・後輩、大勢の人が見舞いに来てくれました。

昼の2時〜夜の7にかけて来られた方の人数は、ナント12人!
非情に有り難い事でした。






【 強制退院 】 − 2005.03 中旬 −

順調に体が回復し、退院まであと1週間となりました。
黙っていても、健康状態を管理されている病院を去るのは、少し寂しい気もしました。
せっかくなので、あと1週間は病院生活を満喫しよう!なんてロビーでくつろいでいると、
担当医が私のところにやってきました。

担当医A:「あの、病理検査の結果が出ました。今度、奥様のご都合の良い日にでも、
お話したいのですが、いつ頃が良いか教えて下さい。」

病理検査・・・。そうか、斬った肝臓を顕微鏡で調べた結果だ!
斬って見てみないと悪性かどうかわからないと言っていたな・・・。でも、間違いなく悪性だろう。
私:「わかりました。明後日、カミさんが来ますのでその日で大丈夫だと思います。」
担当医A:「わかりました。夕方がいいでしょうね。それと、病理検査の結果なのですが・・・。」
私:「あ、わかってますよ。再発の可能性が高いのですよね?」

アッサリと私から答えてしまいました。(笑)
担当医A:「あ、はい、実は、そうなんです・・・。(汗) それでは、明後日。」

本にも書いてありましたが、肝細胞癌は、他の臓器(胃や腸等)にできる癌と比較して、
再発する確率は高いそうだ・・・。
本で知ってしまった時から、それは覚悟していました。
癌になってしまったからには、一生癌だ・・・と思うようにしていました。
悪性だから斬ったんだ・・・。5cm弱は早期癌ではなく、進行した悪性腫瘍(癌)だ!
という事は、病理検査の結果を聞かずとも、今の私には分かっている事でした。

次の日の起床(6:00)、いつもの検温タイムの時間。
同じ病室の殆ど寝たきりのおじいちゃん(丁度私から斜め右のベットに寝ている患者)が
高熱を出したらしいのです。
医師が駆けつけて来ました。何やらその場で検査をしている様子です・・・。
朝食を食い終わったところ、医師数名が、そのおじいちゃんの所に駆けつけて来ました。

医師:「○○さん、先程の検査で分かったのですが、インフルエンザにかかりました!
今から注射をします。あと、お薬も出しますので、安静に寝ていて下さいね!」

何?インフルエンザ!?
どうやら外の世界では、インフルエンザが大流行しているらしいな・・・。(汗)
病院も、お見舞いの方には、無料マスクを配っているし・・・。
インフルエンザかぁ〜。。。大変だなぁ・・・。(汗)

すると、担当医が私のところにやってきて、「別室で話がある・・・」と言ってきました。
何だろ???

担当医C:「えぇ〜っと、どちらにお住まいでしたか?」
ん!?何をいきなり聞くんだ???(汗)
私:「千葉の〜ですけど・・・。」
担当医C:「あ、そうなんですか・・・。ここから電車で1時間かからないですかね?
実はですね、同室の患者さんが、インフルエンザにかかりまして・・・」
私:「あ、○○さんですよね?」
担当医C:「そうなんです!インフルエンザですので感染しないように、本来なら、別室(個室)に
移ってもらうのですが、今、どこも空き部屋が無くてですね、、

手術後ですので、今、インフルエンザにかかるのが、一番怖い訳でして・・・
私:「あ、退院しろという事ですよね?」(笑) <回りクドイなぁ〜。。。
担当医C:「そうなんです!申し訳ございません!!」
私:「いや、仕方が無いですよ。強制退院ですよね!?」(笑)
担当医C:「大変申し訳ないです。一週間早いですけど、お願い致します。
傷口の消毒をまだしなければならないのですが、これは明日、外来に来て頂いて、
治療して下さい。13:00頃に来て頂くと混んでいないと思います。
もし、何かあったら、直ぐに電話を下さい!」

私:「わかりました。じゃ、今から退院の仕度をします。」
担当医C:「すいません。ご自分では気がつかないと思いますが、意外と体力が低下していますので、
帰り道には十分ご注意下さい。」

私:「わかりました。・・・では、退院します! どうもお世話になりました。」
<ペコリ

・・・というわけで、強制退院です!(笑)
バタバタしました。荷物をカバンに詰め込み、退院の準備をしたのでした。
いきなり部屋を出るのもアレなので、同室の皆さんに挨拶をしてから出ることにしました。
勿論、インフルエンザにかかったおじいさんにも挨拶しなければならないが、
アンタのせいで強制退院するんですよ!なんて言えるはずもありません・・・。(汗)
インフルエンザにかかっているおじいさん患者は、マスクをさせられて寝ているようです・・・。


私:「失礼しま〜す。いきなりですけど、退院する事になりました。お世話になりました。」
インフルエンザのおじいさん:「えぇ〜?そりゃ良かったね〜!」

と、起き上がり振り向きざま、マスクを外して話してきた!(汗)
私:「いやいや、寝ていて下さいよ!お父さんも、お体にお気をつけて下さいね!」(汗)
インフルエンザのおじいさん:「ありがとうごぜぇます。」

私:「こちらこそ、ありがとうございました。失礼します。」
(汗)
オイオイ、何もマスクを外して話さなくても・・・、恐ろしい・・・。(汗)

帰りエレベーターで降り病棟を去る前に、看護師さん達が総出で見送ってくれました。
いきなりの退院でしたが、病院の皆さんには大変お世話になったと
感謝の気持ちでいっぱいでした。

帰りがてらに、会社の上司や先輩、友人らに「強制ではあるが、退院した」事を
携帯メールしました。
皆さんから、「とえいあえず、おめでとう」の返信の嵐が来ました。
本当に有り難い事です。
友人の一人に、この様な方もいました。
趣味の関係のネットで知り合った山陰地方にお住まいの年上の男性の方です。
まだ実際に一度もお会いした事がないのに、毎日のように激励のメールをくれたのでした。
実際に、お見舞いに来ていただいた方も含め、私は本当に良い人達に囲まれて生きているんだと
つくづく実感したのでした。

「有り難うございました。」

一時間後、自宅の最寄り駅に到着しました。
・・・非常に、、、疲れました・・・。(汗)
こんなに疲れるとは思っていませんでした。。。
担当医師が言っていた様に、相当体力が激減している事を実感しました・・・。










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